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「いのちに届くことばを大切に」内田麟太郎さんインタビュー

今年は「国民読書年」。リトル・ママでも、本誌6月号で絵本特集を組んで、家庭での読み聞かせを応援しています。その記事でも紹介していますが、日本を代表する絵詞作家・内田麟太郎さんにインタビューする機会をいただきました。絵本の作り手の思いや、ママたちへのメッセージなど、作家の生の声をお届けします。
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内田麟太郎(うちだ・りんたろう)
絵詞(えことば)作家。1941年大牟田市生まれ。「さかさまライオン」(絵本にっぽん賞)、「うそつきのつき」(小学館児童出版文化賞)、「がたごとがたごと」(日本絵本賞)などの絵本、詩集、児童書など著作は150を超える。近著は「だんどん だんどん」(内田麟太郎 文・かつらこ 絵/PHP研究所)。素顔は、ひょうきんで、ちょっぴりあまのじゃくで、とてもオシャレなおじいちゃま。

「絵詞作家として」

編集部(以下・編):内田麟太郎さんは、「絵本作家」ではなく「絵詞作家」といつも名乗られていますね。
内田麟太郎さん(以下・内田):絵本を作るのは共同作業です。私は絵本の文と、ト書きを書いたりしますが、ひとりでは絵本は作れません。画家さんがいて、編集者がいて、印刷屋さんがいて、他にもいろんな人がいて、初めて本ができる。だから、絵本作家というのは違和感がある。私は「絵詞作家」なんです。
編:最近は絵本の読み聞かせをするママ・パパも、昔より増えているようです。
内田:昔は物語といえば、桃太郎、金太郎、浦島太郎くらいしかなかったから(笑)。今は本もたくさんある。子どもたちは読んでもらうことが嬉しいのですから、どんどん読んでください。
特に5才くらいまでは、「こころ」や「ことば」がぐんぐん発達する時期。子どもたちが一番輝きを放つ、最も大切な時期です。そんな時期に、絵本を読むのはとてもいい。親子で本を読む時間と場を大切にしてくれたらと思っています。
編:その「時間」と「場」が子どもの心の栄養になるんですね。
内田:そう。絵本はあくまでも子どもを育てる手段・道具の中のひとつ。大切なのは、お母さん・お父さんの膝の上という場で、その声やぬくもりを感じながら物語を読んでもらうことで、絵本は脇役です。内容よりも、その時間と場の方が大切です。
それに、絵本に限らず、ふれあいの中で親子の関係を築くことは、他者との関係の基礎を作ることにつながります。それはすなわち、命の感覚を育むことなんです。小さい頃に人と人との関係性がしっかり育まれていれば、大人になってから人を殺めたり、傷つけたりしようとはしないはず。幼い頃の記憶が、遠くから聞こえてくる声のように、その人を導き、守ってくれるからです。

絵本「まねっこでいいから」のこと

編:昨年11月に出版された絵本「まねっこでいいから」は、いろんな方面で話題を呼んでいます。
内田:この作品のきっかけは、あるお母さんが、自分が虐待を受けた経験から、我が子を抱けない、と私のホームページに書き込みをされたことでした。私も子どもの頃、継母から愛されずに育った子どもでしたから、「子どもの愛し方が分からない」というその苦しみが、自分の力だけで解決できるものではないことを知っていました。そこで、自分のプライベートアドレスを一時的に公開し、そこでそのお母さんとやり取りをしたんです。私はこう伝えました。「本当の抱っこでなくてもいい、愛がなくてもいいから、まねっこで抱っこされてみてください」。その後、お母さんの心も少しずつほぐれていくようでした。その時に動いた気持ちのことを、多くの方に伝えたかったんです。
編:このところ、虐待・育児放棄の報道が相次ぎ、子どもが犠牲になる痛ましい事件も多く起こっています。
内田:昔と今では、暮らしの形が変わってきていますし、家族のあり方も変化してきています。私はそういった面の専門家ではないから、事件や問題に対する分析や解決策を示すことはできません。それに、この「まねっこでいいから」という作品も、一番届けたい人…すなわち虐待や育児放棄といったことの当事者には最も届きにくいのかもしれません。しかし、それでも「この作品を書く」という衝動が私の中に生まれたから、書きました。ものを書く行為というものは、そんなものです。そして、書いたからには、どんなに遠回りしてでもいいから、1人でも多くの人のもとに届いてほしいと願っています。
「まねっこでいいから」
内田麟太郎 文/味戸ケイコ 絵
瑞雲舎/1,575円
作品概略:愛されずに育ったため、自分の子どもを抱くことができない母親がいました。ある日、子どもに「まねっこでいいから、だっこして」と言われ、子どもを抱きしめてみると…。
柔らかいことばと絵で、親子のふれあいの大切さを描いた作品です。
編:最後に、麟太郎さんが作品に託す思いとは?
内田:絵詞作家である私は、「ことば」で表現し、伝えていくんだけれども、そのことばは意味や音で人を縛っていきます。それでも、やはり伝えたい。だからこそ私は、「いのち」に届くことばを大切にしたい。たとえて言えば、長新太さんの絵のように、心にすっと入ってくるようなものがいいですね。論理的なことばよりも、生きていることばを、これからも子どもたちに届けたいと思っています。
[取材協力:子どもの本専門店 エルマー]
写真は今年3月、「大野城まどかぴあ」で開催された内田麟太郎さんの講演会「絵本に背中をおされながら」より
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